エピソードや会話の意図を考える読み
作家の意図や計算を考える読みですが、選択意図に注目します。
この読みを考えるために、ストーリーとプロットという言葉を理解してください。
ストーリー:素材としての出来事
プロット:語られる物語
小説はストーリーの一部だけをプロットとして文字化しています。例えば、高校3年の主人公が弓道部のキャプテンとして最後の試合に出る場面を描くとします。素材としての出来事(ストーリー)としては、例えば、次のようなエピソードが考えられます。
- 前日練習の友人との対立
- 当日朝の縁起の悪い出来事
- 試合場への移動
- 試合当日の友人との緊張と和解
- 試合直前の緊張と後輩との会話
- 射場に向かう時の会話
- 射場に立った緊張
- 矢をつがえる瞬間
- 矢を放った瞬間
- 射場での会話
- 試合結果
- 試合後の会話とミーティング
- 仲間との食事
試合一つをとっても、このように様々なエピソードが想像できます。もちろん、これ以外にも無限のエピソードが想像可能なはずです。作家はそれらの中から「これが必要だ」「これが有効だ」と思えるエピソードを選び、さらに、選んだエピソードの中でどんな会話をするか、どんな行動・振る舞いをするかを考えます。その上で、エピソードのどの部分を切り取るか、会話のどの発言を引用するかを考えます。
このように、小説に綴られているのは無限の可能性から選ばれた特別なエピソード・特別な発言であり、その選択には作家の意図や計算が働いています。このように考えると、全ての小説について、次の問いが可能になるわけです。
- なぜ、このエピソードを選んだのか。
- なぜ、エピソードのこの部分だけを描いたのか。
- なぜ、この発言を引用したのか。
これらの問いは授業を粗筋の確認から解放します。ただし、根拠を示して意図や計算を説明できることが、問いの条件になります。そして、その答え(意図や計算)は、例えば次のような内容になります。
必要な情報を伝えるため
- 時代・社会の個性や特殊ルールを伝える
- 出来事の理解を促す
- 登場人物の人柄・個性・経験等を伝える
物語展開上の必要性
- 物語を進める
- 展開を印象的にする(落として上げる、予断を与える等)
- 主題を伝える
- 伏線や予告
- 場面に象徴的意味を与える
- 場面の意味を伝える(救済、不安、希望、挑戦、逃避等)
その他
- 面白くする
- リアリティを持たせる(フィクションを現実とリンクさせる)
作家の意図や計算は、例えば、このようなものが典型になります。作家の意図や計算と言われると難しく感じますが、このような解答例を知った上で考えると、考えやすくなると思います。
ちなみに、これはシナリオ作家が箱書きと呼んでいる方法にヒントを得て考えたものです。シナリオ作法については、*を参照。
これを使った分析
『故郷』